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トリポーラス(SONY驚異の技術力) [テクノロジー]

トリポーラスは、SONYが独自に開発した植物由来の多孔質炭素材料となります。

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トリポーラスという名称は、大、中、小という3つ(=トリ)のサイズが異なる細孔(=ポーラス)を持つことに由来しています。

原料は、米の最も外側にある皮の部分。つまり脱穀の際に出る「もみ殻」となります。もみ殻は再利用の道があまりなく、一部が肥料や土壌改良剤などに使われる程度で、世界中で年間1億トン以上が廃棄されています。

SONYはリチウムイオン電池の電極に使用する炭素材料を研究する過程で、もみ殻のある特徴に注目。それは、もみ殻の細胞付近には大小の二酸化ケイ素(シリカ)が存在し、「シリカの複合体と見なせる」事でした。

工学博士でもあるSONY知的財産センターの田畑氏によると、1990年代後半、高性能な炭素素材を人工的に作り出そうという議論が盛んだったとの事。その中でシリカの微粒子を使って多孔質炭素材料を作る応用理論が脚光を浴びた事もありましたが、実際に量産化しようとすると製造工程が複雑でコストがかさむ為、実践に至っていません。

しかし、もみ殻を利用すれば、天然由来の素材からシンプルな工程で多孔炭素材料が作れると判明。これがトリポーラス誕生の経緯となります。

もみ殻を炭化した後、シリカを除去し、水蒸気による熱処理を行うとトリポーラスが出来ます。「従来の活性炭の製造ラインに、シリカを取り除く為の工程を加えるだけでトリポーラスを量産する環境が整う」としています。SONYは国内にトリポーラスの製造拠点を構え、既に「トン」の単位で生産できる体制を整えています。

複雑な多孔質構造のトリポーラスは、通常の活性炭よりもさまざまな物質の吸着力に優れています。

 「トリポーラスには従来の活性炭で確認されている2ナノメートル以下のマイクロ孔より大きな2〜50ナノメートルのメソ孔と、約1ナノメートルのマクロ孔が多数複合する形で存在しています。そのため活性炭よりも空気中、あるいは水中に浮かぶ分子量の大きな物質を素早く、広範に渡って吸着できます」と田畑氏は述べています。

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↑従来の活性炭とトリポーラスの外観を比較したイメージ図

複雑な多孔質であるトリポーラスは表面積が大きく、ヤシガラなど木の切りクズから作られる活性炭に比べ、約6倍のスピードで体臭やペットの臭いの原因になるアンモニアガスを吸着します。また分子の大きな有機色素は2倍以上、アレルゲンは約3〜8倍も吸着、さらにウイルスや菌も99%以上除去できる特性を持つとしています。

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↑水や空気中に浮遊する粒子をトリポーラスの粒子が吸着するイメージ

また細孔に薬剤や触媒を詰め、保持する性能も従来の活性炭に比べて約2倍との事。例えばガスを吸着する薬剤をトリポーラスに詰め、より長寿命な工場用フィルターや空気清浄機用フィルターを作るといった応用も見込めます。

現在、トリポーラスを採用する商品には、ロート製薬の「デ・オウ」シリーズの男性用ボディウォッシュ製品がああります。またトリポーラスを活用したアパレル製品も次々と形になりつつあるとの事。いずれもトリポーラスの「ニオイの吸着」を活用する商品となります。

しかし、SONY知的財産センターの山ノ井氏は「トリポーラスには脱臭以外にも価値があります」と強調。例えば空気や水に含まれるウイルスをトリポーラスの多孔質を生かして除去するフィルターができるかもしれない。またトリポーラスは食べても問題なく、「サプリメント食品への応用も可能性がある」としています。SONYではトリポーラスの多様な可能性に注目しながら、他社の引き合いに対してはオープンに対応する考えとの事です。

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↑トリポーラスを練り込んだ糸

バッテリー開発のおかげで、意外とSONYはケミカル分野の技術力も高いんですよね。量産体制は昨年の段階で整っているので、新型コロナのパンデミックでその話題が出るかと思ったのですが、全く耳にしないですね…。

■プレスリリース(開発時)
https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201405/14-056/




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